人体と放射線の関係

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放射線の量は、環境にある自然放射線レベル、それより強い250mSv(ミリシーベルト)程度までの低線量レベル、1Sv(シーベルト=1,000mSvミリシーベルト)を超える高線量レベルの3つの領域に分けて考えるとよい(表5-1)。

●いろいろなレベルの放射線量とその影響
高線量放射線 致死的 100 Sv 即死
〜100 Sv がんの放射線治療を行なうときの局所的な照射(部位によって異なる)
50 Sv (局部照射)壊死
10 Sv (全身照射)1〜2週間でほとんど死亡,(局部照射)紅斑
重 症 5 Sv 白内障
4 Sv 吐き気、半数が死亡する
軽 症 3 Sv 発熱・感染・出血・脱毛・子宮が不妊になる
2 Sv 倦怠・疲労感、白血球数低下 睾丸が不妊になる
1 Sv(1,000mSv) 吐き気などの「放射線病」(死亡率は低い)
低線量放射線 250 mSv 胎児の奇形発生(妊娠14〜18日)
〜200 mSv (これ以下の被ばくでは放射線障害の臨床的知見はない)
50 mSv 原子力施設で働く人たちへの規準(年間)
10 mSv ガラパリ(ブラジル)の人が年間に受ける自然の放射線量
0.6mSv 1回の胃のX線診断で受ける量
自然放射線 4.4 mSv (医療検診も含めて)日本人が1年間に受ける平均の放射線量
2.4 mSv 日本人が1年間に自然から受ける平均の放射線量
1.0 mSv 原子力施設の公衆への規準(年間)
0.2 mSv 成田・ニューヨーク間の国際線航空機片道飛行で宇宙線からあびる量

(1 Sv = 1,000 mSv)

放射線障害 (高線量放射線照射の場合)

200〜250mSv(ミリシーベルト)までの照射では、急性の障害があるという臨床的な知見はない。1Sv(シーベルト=1,000ミリシーベルト)以上では被ばく後数週間以内に症状が現れるが、1〜2Sv (1,000〜2,000mSv)では軽微な吐き気があって倦怠・疲労感があるものの、ほとんど治癒される。

2〜4Sv(2,000〜4,000mSv)では発熱・感染・出血・衰弱・脱毛などの症状が現れ、4Sv(4,000mSv)ではおよそ半数が死亡する。これ以上の被ばくは重症とされ、8Sv(8,000mSv)以上の被ばくは致死的であるが、治療内容によっては助かる可能性があるといわれている(表)。

このように、急性の放射線障害では、ある線量以上を浴びなければその障害は起きないという「しきい値」がある。

妊娠初期の胎児は放射線の影響を受けやすい。この時期の胎児は細胞分裂を活発に行なっていて器官や組織が成長している時期なので、放射線に対して特に感受性が高いためである。受胎後14〜18日の被ばくが最も危険で、250mSvで奇形が現れる。このため妊婦はX線検査を受けてはいけないと言われたことがあるが、胃のX線透視検査での線量(0.6mSv程度)はこの「しきい値」にくらべて十分小さいので、事実上の危険はない。

がん、白内障、寿命短縮、不妊などの症状は、放射線を浴びてもすぐには現れず、一定の潜伏期間の後に現れるので晩発効果と呼ばれる。晩発効果のなかで深刻なのは、白血病とがんである。1,000人の人が約500mSv浴びると、2〜20年後には、そのうち2人が白血病を発症するという統計がある。また、一度に2Sv(2,000mSv)以上を目に浴びると、数年〜数十年後に白内障になるというデータもある。しかし、晩発障害も200mSv以下では起こらない。

晩発障害による疾病は、被ばく発症時期までの期間が長いだけでなく、放射線以外のいろいろな原因によっても生じ、通常は放射線以外の原因による確率のほうが高いため、原因を放射線被ばくに特定することはむずかしい。

局部的に一度に高線量を被ばくすると、3〜4Sv(3,000〜4,000mSv)で脱毛があり、10Sv(10,000mSv)で赤く腫れあがり(紅斑)、30Sv(30,000mSv)で壊死に至るなどの、放射線火傷の症状がある。

ミリシーベルトとマイクロシーベルト

1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=100万マイクロシーベルト(μSv)