KYOEN2009REPORTその大きな意義と成果

競演2009レポート

撮影:かえるカメラ ▲左・内藤正彦(エレクトリックカフェ)、中央・片岡道子(アンサンブルテスタカルド)、右・吉田剛士(マリオネットマンドリンオーケストラ)撮影:かえるカメラ/文中のステージ写真提供:片岡マンドリン研究所/Report:ebe

 マンドリニスト、吉田剛士はマンドリンとポルトガルギターによるユニット「マリオネット」で演奏、作曲家活動を続けるマンドリニスト。一方彼は、同名のオーケストラを組織して、マンドリンを核とする音楽活動を続けている。その彼が、満を持してマンドリンミュージックの明日への扉を開ける時期到来との判断から、意義あるコンサートを企画した。マリオネットとともに「マンドリンの未来を見据えているアンサンブル」、かつ「ユニークな活動」である点を吉田氏が独自に評価している2団体に呼びかけ、賛同を得て今回同じステージでパフォーマンスを繰り広げることになった。

▼写真をクリックすると白熱のステージを大画面で見ることができます。 (撮影:東 昭年)
白熱のオンステージ!

アンサンブル・テスタ カルド
 
 日頃から現代作曲家の作品を取り上げ、熱く燃える演奏を聴かせ続けるアンサンブル・テスタ カルドは、1982年、マンドリニスト片岡道子と門下生・田島透を中心に発足した団体。今回は、ほかの2団体とステージをともにするということで、現代作品を並べ意欲的なステージで、今回の「競演」開始を宣言した。

 1曲目、Lutz-Werner Hesseの「Nacht-und Tagstüche」は5つの情景からなる作品。2009年4月に参加した瀬戸内撥弦楽器フェスティヴァル2009でも披露した。ヘッセは1955年ドイツ生まれの作曲家。マンドリンオケのための作品、マンドリンソロ作品やギターとマンドリンの二重奏曲など精力的に発表して来ている。
 続く2曲目「Konzert h-moll」はArno Starck(1886-1690)のマンドリン協奏曲。女性マンドリニスト、ガートルード・トレスターのCDなども紹介されている割合定番な作品。3楽章構成。1曲目もそうだったが、この作品でもソロ、オケともにもう少し起伏をつけ、感情を露にダイナミクスを表現すればいいのに、という感想が残った。マンドリン作品のバリエーション、標準的な状況がかいま見れたのは個人的な成果だったが。3曲目「ITINERAIRE」はアルペジオによる重奏が展開してくマンドリンの持ち味を活かした作品、4曲目は、再び3楽章構成の作品で、構成感のしっかりした作品。ともに過不足なく演奏したと思う。一方で、もっとダイナミックな演奏が聴けたら・・・という心残りも。
 団体の主宰者・片岡さんは公演直後自身のブログにも「積極的な意思表示が欠けた」「演奏者が自信を持って楽しく演奏しなくっちゃ」といった言葉を並べた。もうひとつ突き抜けたパフォーマンスができたら・・・という思いは、演奏者たちが一番良く知っているのだ。それだけに、惜しかった気がする。
 アンサンブル・テスタ カルドはすでに次の公演に向けて走り出している。来年にはドイツ公演も予定されていると言う。彼らの活動を知るにつけ、楽曲に対する真摯な態度と熱意に頭が下がる。
 
エレクトリックチェア

 休憩を挟んで登場したエレクトリックチェアは、かれらのホームページ情報で知ったけど、アメリカののインターネット放送"live365.com"を利用したマンドリン音楽専門のチャネル「Mandozine Radio」でも紹介されているほど、そのスジではメジャーなグループになりつつあるようだ。
 “楽器製作家・マンドローネ奏者の嶋田茂、作曲家の内藤正彦によって1994年から開始されたプロジェクト。現在のメンバーは8名。演奏者同士の距離を大切に考えつつ、楽器の響きを活かす取り組み、自然環境や身の周りをテーマにしたレパートリーを展べる過程に於いて、結果的に従来のマンドリン合奏とはかなり異なる音の世界を造りだしている。70曲を越えるレパートリーは内藤正彦の書き下ろし。奏者は各パート1人、楽曲によって編成や配置が変わる。”(ホームページ・プロフィールより)。
 個々の演奏曲というより、ステージの様子、さまざまな表情、表現が、ひとつひとつ印象に残り、全体としてなにかを記憶に残させる仕掛けがおもしろい。不協和なシーケンスフレーズで始まった「vineryard」から、8ビート3コードロックのリズムをギターとマンドローネで刻む作品など、ときにアクション(=ダンス)を披露したり、と、見て聴いていて飽きない。マンドリンという楽器を意識しないマンドリン合奏団。衣装がまたユニークで、見る側に問いかけるなにか不思議な仕掛けをつくり続けるこびと達のようだった。
 

マリオネットマンドリンオーケストラ

 さらに休憩を挟み吉田剛士率いるマリオネットマンドリンオーケストラの登場。
 「はたらく日本人」は、8分の6拍子の各リズムの表に12の音形によるリフをのせたオスティナートが全編のモチーフ。次々繰り出される魔法のような効果を作る、その音、音量、アンサンブルによって説明抜きでタイトルの意図することを、気迫を見せながら聴かせた。初めてこの作品を聴いたわたくしはかなりびっくりした。マンドリンの叙情性やノスタルジックな和声感をもっと現代に引き寄せる作品、団体、手法はないかな・・・などといいうことを不遜に考え始めていた今日この頃であったから。なんだ、吉田さんあなたがそうだったのですか! ちなみに作曲はマンドリンとポルトガルギターのデュオ、マリオネットの相方=湯浅隆との共作。
 続く5作品ともマリオネットらしさ、マンドリンらしさを大切にした作品が並んだ。期待をそがれたかと言うと、むしろ逆で、やっぱりこれ、いいよね、という作品。マリオネットがこれまで育み培って来た聴かせどころをオーケストラを使うことによって、より鮮明にしている。たとえば同一フレーズをパートで移動したり、アンサンブルであることのメリットである音の厚みで聴かせどころを増やしたり、ギターとの掛け合いを楽しめたり。最後の「旅路の果てに」は1stコンサートからのメモリアルな作品とのこと。今回のステージにふさわしいバラード作品で締めた。
 演奏者の皆さん関係者の皆さん、お疲れさま。新しい一歩を踏みだしているぞ! という宣言が十分に伝わるステイトメントコンサートだった。