ギターの時間、2010年4月1日号
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ショコラ・ド・ミラクル(5)

マンドリン・デュオ=プラネット・スピリタは、終始ステージにいるわけではなく、ストーリーに合わせて音楽家として要所要所登場して演奏。ただし、ストーリーに絡んで出てくるのでちょっとした仕草や表情は任されてはいるものの、要求されている。その演出に的確に応え、しかも演奏でステージの幅を広げた二人に、本番直前、話を聞いた。


ーー今回のステージ、まずは感想をお願いします。

丸本:音楽だけじゃなくお芝居というか流れを作ったり出入りによってひとつの劇を作るというのは初めての経験だったので、たいへんなことをしているなと実感しました。

ーーだれかのコンサートにゲスト出演するだけのほうがラクですか?

丸本:音楽を演奏するというところでは同じなんですが、ステージに出て行く、または掃けるタイミングでずいぶん見え方が変わるというのは、表現としてたいへんというか難しい部分があるなって思いますね。

堀:でも、みんなで作っている感覚がありますよね。僕は去年、客として見ました。演奏会という言葉は当てはまらないですが、内容、要素から言ったら、チケットの価格以上のおもしろさを感じました。
 今年はステージに出していただける立場でリハーサルから見ていて思うのは、ピアノの曲にしても、たぶんもっと候補に挙がっていた曲があると思うんですが、そこからずいぶん削ぎ落としてるのがわかります。しかし、まだ作り込みの作業が続いている。ステージを進行しながら立ち位置を始め、トークの加減、歌の入のタイミング、台詞のトーン、しぐさ。ぎりぎり本番直前まで細部を確認したり修正したりといった作業が続いているんです。

ーーさっきまでやってましたね。

堀:1日目(2月7日公演)と今日とですでに変えた演出部分もあります。柴田さんと浅倉さんと演出家の山下さん、それに今回の舞台監督の方とで、それぞれの立場で、もっとよくしていこうと、どんどん意見を言い合って、ゴロゴロ流れが変わる。
 普通、「なぜそこまでやれるんだろう?」って疑問がわくと思うんですが、でもそれはお客さまへの愛情以外のなにものでもない。そういう意味ではぼくら演奏者たちには演技らしい演技はなかったですが、音とか、気持ちで入れ込んでやっています。音楽だけのステージと、今回とどちらがたいへんか、と聞かれても、僕の場合は、全然違うモノをやっている感触なので・・・。みんなで一個の劇団みたいな、ね。

ーーそうなんですね。ところでこの公演を含め、CDデビュー後、この半年〜1年、新しい体験を積んだ、という感触があるのでは?

堀:いろんな場数を踏みました。よかったと思うのは、過剰な緊張はしなくてすむようになったかな。「間違ったらどうしよう?」というふうな不安がなくなりました。

ーーポジティブにいられるということですか?

堀:経験が増えたおかげで演奏する心構えが変わってきた気がします・・・。「どこへ呼ばれても弾きます!」みたいな。

ーー競技選手にもきっとそういう面がありますよね。いわゆるメンタルトレーニングを積むことで「勝つイメージ」に自分を持っていくみたいな。

堀:お客さんにみられていることによる緊張で、テンションをあげるというか、いい方に持っていけてる、そういう意識が持てている気がします。

ーー丸本さんは、他のクリエイターの仕事ぶりをみていて、なにか感じたことは?

丸本:みなさん、お客さんのほうに意識が向いていて、よくするための方法、それぞれ持っているモノを全部出し合ってひとつのものを作っている。すごく刺激的でした。音楽をやるメンバーとして感じたのは、ポップスのほうで活躍されている方の音楽の作り方を間近に見て、それはすごく刺激になりましたね。

ーーどんなところに刺激を感じたんですか? 浅倉さんのことですね?

丸本:そうです。楽譜を頼りに演奏するというタイプではなくて、その曲そのメロディー、このコードで、そこに必要なのは、音の厚さであるとか、盛り上がりやテンション感を、最低限のコード感は守りながら表現されていて。そこはこれまでの僕の方法とは大きく違うので、すごい刺激になりました。

ーーこの公演を終えるとスピリタの公演ですね。どういうところを聴きにきてほしいですか?

堀:柴田さんを見ていると忙しいのに、この公演のために山のように本を読んで、構想して、僕の今までの経験、体験からは考えられないような準備をして、その素材の中で、さらにいろんなものを削って最後にひとつのものを作り上げる。一回本番公演を経て、さらにまた進化している、そういう現場を目の当たりにしていると、たとえ1回の演奏会、ステージでも、決めて予告したプログラムを、丁寧に演奏する、というだけのステージにはしたくないですね。
 たんにお金をかける、手をかけるということではなく、その日、その公演が終わって家に帰ってからも余韻がある、一日がその演奏会のためにあった、と記憶に残るような・・・。演奏している時間だけではなく、全体を見て聴いて、感じてもらえるような、そういう演奏会にしたいですね。

丸本:いろんな方が自分たちのできる最善のものをお客さんのために作り出す、そういう気持ちは僕の中にもあったんですが、この現場を目の当たりにしたので、さらに意識が変わりました。来ていただく人に向けて、自分ができるのは、よりいい演奏をしていい音楽を聴いていただけるようにすることですから、改めて、最後の最後までそれに向けて最大の力を出せるようにしていこうと思います。

  その後予定通り3月6日に行われたスピリタの公演は、これまで聴いたプラネット・スピリタとはあきらかに異なる芯の強さと、意志を感じるトレモロ、幅広い音の空間を作り出していた。写真を以下で紹介しています。

◆プラネットスピリタ3月6日CDデビュー記念公演レポート

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プラネット・スピリタ
堀 雅貴(マンドリン、マンドロンチェロ、ギター)
Masataka Hori (Mandolino, Mandolon cello, Guitar)
丸本 大悟(マンドラ、マンドリン)UCJ-Japan
Daigo Marumoto (Mandola Tenor., Mandolino)
 2008年7月に結成のマンドリン・デュオ。メジャーCDデビューしたのは、国内では初。大小3種類のマンドリンとギターを駆使する卓越したテクニックで美しいメロディを奏でる堀 雅貴と、作曲・アレンジに長けた丸本大悟の華麗なサウンドが、マンドリン界の新境地を描き出す。
 デビュー・アルバムには、クラシック、J-pop、洋楽、さまざまなジャンルからの曲がセレクトされ、優しく奏でられている。
プラネット・スピリタ ▲デビューアルバム「プラネット・スピリタ」(ユニバーサルミュージック)