ギターの時間、2010年7月6日号
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宮下祥子の最新アルバム「Gift」は作曲家・壺井一歩による『新・12の歌』を核に構成されている。日本の叙情歌を中心とするこの12編に加え、さらに2曲収録。「この道」(佐藤弘和編曲)と「さくらの主題による変奏曲」(横尾幸宏)の2作品だ。計14曲は最終的に「この道」で始まり「この道」で終わる構成となった。美しい静かなたたずまいの中に、太い主張が感じられる作品集だ。クラシック・ギターの新しいスタンダードとも呼びたくなる顔つきの作品が並ぶこのアルバムの制作エピソードをどうぞ。(質問:江部一孝)

――このCD企画の発端を教えてください。

宮下:ホマドリームの前社長・菅原 潤さんの発案です。新たなギターレパートリーとして「新12の歌」という曲集を作ろうと思うがやってみないか、と菅原さんに持ちかけられ、是非私がやりたいと引き受けました。これが始まりです。

――壺井一歩さんについて、また、作品について最初の印象、感想を教えてください。

宮下:ギターを知っている人だなと思いました。つまり、ギターを触れる(さわれる)人という意味。しかし、ギターを甘やかさないといいますか、ギタリストに対して厳しい注文を突きつけているように感じ、手ごわいな、と思いました。つまり音楽は優しさに満ちているのに、人間は厳しい人という印象でした。

――レコーディング前の一歩さんとの打合せはどんなかんじで進行したんですか?

宮下:壺井さんが曲を書き始めてだいぶ経ってから、12曲全ては完成していなかったけれど、数曲を私のリサイタルで初演することになりました。2008年の4月です。顔を合わせたのはその時が初めてです。私のCDとして録音することに決まってからは、自宅で録音したものを送って聴いていただいて逐一意見を伺いました。テンポ感や、イメージ、そして演奏困難な箇所をどうするかという相談です。書き換えていただいたところもあります。もちろん書き換えた後のほうが、ずっと素敵な作品になりました。

――一歩さんに4月にお会いしたとき、今回の作品は、ほとんど編曲というより作曲に近い作業だったというようにおっしゃってました。 オリジナルのメロディー(テーマ)部分と、壺井オリジナルとなる、いわばブリッジ部分を演奏するとき、 全体を構成していくにあたって考えたことや、浮かんだこと、または打ち合わせたことについて、教えてください。

宮下:作品の構成について考えたり、作品のイメージをつかむのはそんなに難しい作業ではありませんでした。ごく自然に、こういうことだろう、と理解できました。それは私にとって、どこかの風景を眺めているのと同じように、壺井さんの音楽を理解できたからですね。
 次に何がくるのか、つながりが不可解な箇所も一つもありません。
 壺井さんの「新12の歌」は色合いや景色を連想させると同時に、音楽の必然性を自然に感じることができる作品に仕上がっているということではないでしょうか。
 私はギターの美しさは音が消えていく過程にあると思っています。壺井さんのどの曲にも、楽器の余韻を上手に使って魅力を引き出せるような“間合い”、“呼吸”を作れる箇所があって、それが、録音という仕事になると、自在に試してみることができます。最も美しく成功したテイクを使って作品を作りあげることができますから。何度もテイクを重ねるのは、体力的には疲れますが、美しさや音楽が求めているニュアンスを追求できる最高の機会です。新しい作品を録音現場でいろいろ試すというのは、すごく充実した時間でしたよ。

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◆みやしたさちこ◆
7歳よりギターを始める。
2002年アンドレス・セゴビア国際ギターコンクールで第2位(スペイン・リナーレス)。2003年イタリア・キジアーナ音楽院サマーセミナーに参加し最優秀ディプロマを取得。これまでヨーロッパ、南米の20都市でリサイタルを行う。
2006年、パラグアイで開催された「ギターと女性」フェスティバルに日本人ギタリストとして初めて招待される。 CD「パッション」「ヴィルトゥオーゾ」(HOMA Records)は共に「レコード芸術」誌で”特選盤”に選ばれ好評を得る。
2008年、世界PENフォーラムで上演された井上ひさし作の朗読劇の音楽をギター生演奏で担当、以後、毎年再演が続いている。NHK・FM「名曲リサイタル」に出演。
札幌市民芸術祭賞受賞。同奨励賞を2度受賞。
札幌大谷大学音楽学部非常勤講師。
宮下祥子公式HPはこちら


◆12の歌◆
古くはシューマンの12の歌が有名だが、クラシック・ギタリストにとって有名なのは武満徹による12の歌。正式タイトルは「ギターのための12の歌」。1996年1月25日ショット・ミュージックから発売された楽譜集をさす。「新12の歌」はこれに倣い、かつ並ぶギター作品集に仕上げっている。楽譜集の登場が待ち遠しい!
 なお、収録曲の中から5作品の音源、楽譜は、既に雑誌「ギタードリーム」で紹介されている。また作曲者・壺井一歩さんのインタビューが、同誌9月号で掲載される予定とのこと。 武満徹 ギターのための12の歌

スコアダウンロードはこちらから

宮下祥子さんのアルバム

GIFT
HOMA Records HR1188 ¥2,730

【収録曲】
1. 山田耕筰[佐藤弘和・編曲]:この道
2. 横尾幸弘:さくらの主題による変奏曲
3. 壺井一歩:新12の歌
   アメージング・グレイス(スコットランド民謡)
   おぼろ月夜(岡野貞一)
   城ヶ島の雨(梁田 貞)
   竹田の子守歌(京都民謡)
   五木の子守歌(熊本民謡)
   グリーンスリーヴス(イギリス民謡)
   すみれの花咲く頃(F.デーレ)
   I Love You, Porgy(ガーシュウイン)
   みどりのそよ風(草川 信)
   ペチカ(山田耕筰)
   仰げば尊し(スコットランド民謡)
   この道(山田耕筰)


ヴィルトゥオーゾ~19世紀ギター作品集
HOMA Records HR1141

ソル:悲歌風幻想曲op.59、ワルツop.32-2、ギャロップop.32-6、ジュリアーニ:ロッシニアーナ第3番op.121、前奏曲第4番op.83-4、前奏曲第1番op.83-1、アグアド/練習曲第18番、第24番、第3番、[以下二重奏]ソル/幻想曲op.54bis、ディヴェルティメントop.61-1   共演:パヴェル・シュタイドル


パッション
HOMA Records HR1063

ブローウェル:ソナタ、二橋潤一:5つのノスタルジーより第2番、4番、ロドリーゴ:小麦畑で、ヘネラリーフェのほとり、祈りと踊り、C=テデスコ:ソナタ・ニ長調、タレガ:アラビア風奇想曲、ムーア風舞曲、アランブラの想い出