▲愛器はずっとラミレス。もう何台目になるのかな?
弾き込んでは弟子や生徒にゆずったりして、代を重ねた。

楽譜集「クラシックギターのしらべ」の著者、斉藤松男さんの
ギターライフです。「クラシックギターのしらべ」には、
クラシックギターの演奏にハマった人なら一度は憧れる作品、
また、時代を越えてレパートリーにしたい人気作品、
そして、ご自身がギター教室の現場で要望され
自らアレンジした作品を集めています。

この楽譜集、近年のクラシックギター用楽譜の中では、
かなり売れたようです。
改めて曲目を眺めて驚くのは、クラシック作品だけにとどまらない
ユニークな選曲ですが・・・。

                     

第8回 僕流の生き方、教え方

●○● ホセルイス・ゴンサレスさんやホルヘ・アリサさん、ルイゼ・ワルカーさんといった先生に教わったのは学生時代ですか?
斉 藤 いやそうじゃなくて、合奏をすっとやってきて、「また独奏をやろう」と思い立って教室を始めてからだね。
ルイゼ・ワルカーは、新堀さんにいたときに来日して、同じステージに立たせてもらったりもしたんだけど 、それは、実際にこの場所に移って再び本格的にやり始めてからです。
●○● そうだったんですか?
斉 藤 ホセルイス先生はすごい上手だったから、直接スペインに通ってずいぶん勉強したんですよ。当時日本人で、僕からみて「この人は!」っていう先生が身近にはいなかったからね。僕の弾き方を理解してくれる先生もいなかったし。
●○● というとどんなところがですか?
斉 藤 なんというか、わりと「弾いちまえー!」
みたいな勢いというのかな? そういう演奏だったんですよ。
日本ではその頃、みんな楚々と弾く人ばっかりで、
なにか自分の感情で弾くような人はいなかったんですよ。
ところがホセルイス先生はそのへんを理解してくれた。だから通ったんですよ。
クラシックの曲は、この先生に全部習い直したっていう感じだね。
アリサさんは、少し習っただけだね。
●○● わたしにとって初めてのクラシックギター曲は
禁じられた遊びですが、
近年再入門したのは「エストレリータ」からなんですよ。
ホセルイスアレンジ〜斉藤松男さんの楽譜からです。お二人ともわたしにとっても師匠です!(笑)
斉 藤 ははは。
ともかく当時認めてくれたのはあの先生だけだったし、
僕が認めてほしいと思たのもあの先生だけでしたから
レッスンは面白かったですよ。
だから演奏のスタイルは出会ったときから
まったく同じようだったので、お互い受け入れられたのかな。
●○● 時代は1980年?
斉 藤 その頃かな・・・。
●○● そうするとクラシック・ギターを通じた交友というと?
斉 藤 橋本道範っていうのが西荻に住んでいて、彼とは年一二回旅行したりする中だね。ミチギター教室を主宰してる。読売・日本テレビ文化センターでもやってるのかな。
●○● クラシックギター界の人はいかがですか?
斉 藤 暗いから嫌いなんだ(笑)。フラメンコの人なんか楽しいじゃない? 楽譜書いてもらったりすることもよくあるしね。あと目黒の加藤くんは昔の仲間だけどね。
●○● ギターはずっとラミレスなんですね。
斉 藤 気に入ってますね。生徒さんもけっこう持っているし。弦長の長いラミレスが好きで。だから僕が使って生徒さんに分けてあげたりして来ているからね。666mmモデルです。古い方は20年くらい使い続けているモデル。もうひとつ持っているのはここ2~3年前のもの。比較的新しいのは調整して生徒さんに渡してる。
●○● グランドスペシャルですか?
斉 藤 MTマークっていう最高級品マークがついてる。あれはね、後ろの木材は・・・。木材はぼく詳しいからね、木工をやるから(笑)。そういう材のいいものを手に入れたときに、自分で手を入れて修理して使ったりね。 一カ所わからないところがあったので、渡西して習って来て自分で塗ったけど。
●○● へえ! ご自分でいろいろやられるんですね?
斉 藤 もう、ここだけの話、修理屋さんには怖くて出せない。塗装も違うから。手で塗る塗装ができる人は日本には何人もいないよね。だから自分で納得してやりたいから修行して来たんです。
●○● そうやって修理して修理代を上乗せして生徒さんに売る、と?
斉 藤 ははは、いやいや、それはしないよ(笑)。最近のラミレスはできがすべて整っているから。 僕が言ってるのはいい材を使いながら修理が必要な、たとえば60年代のモデルとかね。 やっぱり相当痛んでいるから、修理しながら弾いたりね。
●○● フレンチポリッシュとかですね?
斉 藤 そう。ずっと、それこそ20年近くなるかもしれないけど、
この人のギターをリーズナブルな値段で仕込んで来て
生徒さんに渡したりもしているんだけど、
この人の奥さんが、また優れたポリッシュの専門家で、すごい人なの。 代々続いている人でね。こないだの正月、許可が下りたので
行って習って来たばかりなの。 で、僕は一時こんなものを作ってたの。 これ、オルゴール。材はセコイヤなんだ。 あと、これも、そう。
●○● おお! 量産して売りましょう!
斉 藤 いやだからね、20年くらい前までは、凝ってたの。
もともとは僕は画家になりたくて東京に出て来て、
それで、副業にギター弾いてたと言うか・・・。
ギターは「講師しないか?」と誘われたから
やっただけでね。
ほら、これもハカランダで作ってたんだ。ギターを弾きながら。
これは音大の生徒が作ったコピー。
おもしろいでしょ? レリーフもずいぶん作ったよ。
小さい頃から木工と彫刻はやっていたから。
でも海外旅行なんか行くと、自分の腕を思い知るから
やらなくてよかった、って思おうけどね。

今は年に何回か版画を作ったりしてね。
楽譜集に入っている挿絵は、あれは僕の版画なんですよ。
趣味で作って、入れてよー、って。
▼趣味を越えたセンス!教室のあちらこちらにさりげなく飾られている
年賀状刷るのも昔は楽しくてさ。
でもそのうち作ってくれって注文がきたりすると
しまいにはめんどくさくなってね。
ギター練習する時間がないよって(笑)。

でもいまだにギターより上手だよ、木工は!
(笑)
好きなことやらなくちゃ、人生1回しかないんだから。
暗いギタリストとつき合っている暇はないよ。

(終わり)

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2009-10-8-WED

ギターの時間